相続対策の3本柱のうち、最も多くの方が興味を示し、貪欲に、果敢に挑戦されるのが、節税対策です。
相続税対策というくくりで、認識される方もいらっしゃいますが、相続税対策は、この節税対策だけでなく、納税対策も含めた内容となります。
但し、この相続税対策、節税対策と納税対策ではベクトルが異なり、実際の行う対策の内容は相反することが多々ありますので、節税対策上、有利になることは、納税対策上、不利になることも多々ありますので、気を付けていただきたいところです。
節税対策は、正に読んで字のごとし。
いかにして、相続税の納税額を抑えるのかといった対策になります。
どのようにして行うかといえば、
相続税法を読み解き、最も相続税の納税額を抑えるようにする。例えば、古い話にはなりますが、その昔、実際にあったお話のように、相続人の数(※人数ではありません)が増えれば、相続税の計算上、相続税の納税額は少なることから、養子縁組をする・・・それも果てしなく・・・といった笑い話のような本当の話もありました。
ここでの注意点として、非常に重要な事をお伝えしますが、相続税法上に記された内容を「節税効果があるから・・・」といって行き過ぎた事を行ってしまうと、相続税法は改正されます。
ですから、上記のように、過度に養子縁組を繰り返した方がいたために、今では、相続税の計算をするにあたって、相続税の計算上、納税額が少なるという視点でみた養子縁組の効果には、一定の制限が設けられました。
さて、相続税の計算上、相続財産の評価が問題になりますが、同じものでも、評価の仕方が異なってしまったり、「時価」といって、その日、その時間、その瞬間で価格が異なるものもありますので、相続税法では、その相続財産の評価の仕方について、財産評価基本通達という通達を出しています。余談になりますが、これはあくまで、通達です。通達とは、行政庁が、行政職員に対して示すルールですから、過去の最高裁の判例でもあった「通達は国民を拘束しない」という名フレーズにもあるように、絶対ではありませんし、一般的には、これが、ルールとして運用されています。
財産評価基本通達は国税庁長官から、税務職員に対してのルール本です。相続税の計算に当たっては、このルールで、計算しなさいね!といったルールです。
税務職員も公務員であり、各財産の鑑定士等といった財産評価のスペシャリストではないため、一律で、一定のルールに基づいて、且つ迅速に簡便的に行う必要があるため、このようなルール本、つまり通達が出されています。
世の中で行われている節税対策とは、このルール本を書かれたルールを最大限、活用して、・・・うがった見方をすれば、このルールの抜け道を利用して、いかに相続税の納税額を抑えられるか・・・ということです。
巷で、「節税対策」をアピールした相続セミナーや、節税セミナー、相続コンサルティングが行われていますが、全ては、この財産評価基本通達というルール本に書かれたルールに基づいています。
但し、これらのセミナ―をされている講師、コンサルタントが、きちんと、財産評価基本通達に目を通して、理解しているのか・・・というと必ずしもそうではなく、「誰かから聞いた」や「講師陣もセミナーで誰かから聞いた」等ということも多々あり、「勘違い」された対策で、結果的に節税にならなかった・・・等といった例もありますので、気を付けていただきたいポイントです。
また、ルール本に書かれていれば、ルールなんだから、絶対だよね?と思われがちですが、そうではありません。当然、簡便的に評価ができるように定めたものなので、当然、例外もありますし、抜け道もあります。ですから、総則6項という「ウルトラC」と呼ばれるものがあり、この総則6項を適用することで、このルール本をひっくり返すこともあります。
では、どのような場合、この「ウルトラC」である総則6項を振りかざされるのか・・・というと、
それは「行き過ぎた」節税対策です。
巷では、「タワマン節税」等で話題になりましたが、このルール本に書かれたとおりに評価すると、とても効果があるように思える節税対策でしたが、あまりにも「行き過ぎた」節税対策であったため、倫理的にも、また、税の公平性といった点からも、伝家の宝刀でありウルトラCだる「総則6項」が振りかざされたわけです。
近年では、「節税」=「租税回避」と捉えらえるようになりましたので、「節税のために・・・」といった対策は、今後、ますます、厳しくチェックされることが予想されます。